アナルコ・キャピタリズム研究(仮)

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2008-01-01から1年間の記事一覧

私がアナルコキャピタリストになるまで5

やがて自分でDDFの帰結主義無政府資本主義をシカゴ派経済学とともに紹介したくなった。それがアナルコ・キャピタリズム研究(仮)のサイトである。(もともとゲーム理論のサイトの中にあったが分離・独立した。) 一通りは書いたがとくに反響もなくしばらく…

私がアナルコキャピタリストになるまで4

一方でインターネットが生活の中に浸透していた。ウェブサイトを作り何かを多くの人に伝えることが可能になっていた。ゲーム理論のサイトを開設したところ反響があり、どんどん充実させていくことになった。そこであの三原麗珠さんから教材として使いたいと…

私がアナルコキャピタリストになるまで3

大学入学後、生協の本屋で偶然『戦略的思考とは何か』という本を手に取りこれだと思った。高校の頃からギャンブル(に勝つ方法)に興味があって確率論が好きだったが、さらに広義の合理的意思決定論は私にとってすごく魅力的だった。これは有名なゲーム理論…

私がアナルコキャピタリストになるまで2

中退未遂を繰り返しながら、なぜか高校3年の冬には精神科医になろうと思っていた。心理学周辺には興味があったが、官僚志望同様、エリート高校生にありがちなひどい勘違いである(もっともその「特殊学級」からは精神科医1名、警察官僚1名が出た)。 卒業時…

私がアナルコキャピタリストになるまで

元東大生が文科幹部殺害予告というニュースを見て高校時代のことを思い出した。 中学の頃はあのソフトバンクの孫さんを輩出した有名な塾に通っていたが、同時に学校の不良仲間のなかでも一番ゲームセンターに通っていた私(メダルゲーム中毒)。最後の冬期講…

正義とは財である2

正義はあまりにも重要であるために金銭的な取引になじまないのではなく、あまりにも重要だからこそ政治プロセスによって強要されるべきではなく、自発的に金銭的な契約によって取引されるべきなのだ。 蔵研也『無政府社会と法の進化』 7、私的裁判と法の私…

正義とは財である

I君は極端なケースを挙げてきた。 「法律がお金で買える社会では、大金持ちは趣味で人を殺せるのではないか?」 社会的に成功している人間がそのような人として著しく評判を下げるような行為に大金を使うだろうか?娯楽のために人殺しができたのはそれこそ古…

芸術家と金

Zopeジャンキー日記でさっそく先日のエントリへの反応を頂いた。リバタリアニズムというと「市場原理主義」とか「お金がすべての弱肉強食社会」みたいな非難がまず来るが、本当は人間の多様性とそれに伴う制度の多様性を(民主主義とは違って!)認める社会…

移民受け入れの是非3

リバタリアンとりわけ無政府資本主義者の考えなどエクストリームすぎて、ある異なる思想の持ち主は普通の人より理解できないものかもしれないが、私はこの考えを信じるどころか経済理論をバックに自信をもって主張できるし、いかにわかりやすく説くかという…

移民受け入れの是非2

I君も指摘するように日本の警察は無能であり、治安対策により税金がつぎ込まれたからといってうまく機能すると期待することはできない。また彼の言うように、日本の甘い法制度が悪い外国人を引き付けているということも認める。さらに移民はずっと貧しいまま…

移民受け入れの是非

最近同僚になったI君と「日本は移民を受け入れるべきか」ということについて議論した。彼は相当に教養のある知的な人物で、驚いたことにリバタリアニズムだけでなくアナルコ・キャピタリズムという言葉も知っていた。 ナショナリストを自認する彼は移民受け…

ガイ・フォークス

ロンドン中で花火が炸裂している。こちらに来て2年ということになる。私は奇しくも11月5日に英国に降り立ったアナーキストだ。 1534年、個人的理由からローマ教皇庁と対立したヘンリー8世は、ローマ教皇に代わって自分がイギリス教会の首長であることを宣言…

終わり

イギリス経済が16年ぶりのマイナス成長に転じたという。メディアが伝えない間日本を逆転していた、サッチャー改革後に始まる長い拡大が終わったのだ。今日10月24日の新聞・テレビはこのニュース一色である。 10月14日の日曜日Bに会った。Ealing Broadwayにあ…

Bond Street (2008年秋編)8

こうしていい家も見つかり、精神的にも肉体的にも健康を回復し、ネットも一応つながり、ようやく私は普通の生活を取り戻すことができた。 日本に帰る3月まで住んでいたフラットの大家であるBから電話があり近々会うことにした。彼は私と1ヶ月違いの同じ年でS…

Bond Street (2008年秋編)7

9月30日火曜日、私はやっと悲しく惨めなフラットを脱出することができた。新居はロンドンの半郊外にあるSudbury Hillというほとんど完全な住宅街で、駅から大きな公園を抜けてすぐの所に広いダブルルームを借りることができた。周辺はHarrowというロンドンで…

Bond Street (2008年秋編)6

9月28日日曜日、行き先を決めずにチューブに乗った。私はけっこう電車好きで、とりあえずロンドン地下鉄全線の全駅通過または下車をやってみようかと思ったのだ。適当に遠くまで安く行けるし、どの場所にどのような人たちが住んでいるか(主に人種、所得的な…

Bond Street (2008年秋編)5

Oさんと会った9月21日日曜日、LiちゃんとS君との3人でCentreを飲み歩いた。Liちゃんは通常の表記ではRiちゃんだが、パスポートセンターと掛け合って認めさせたほどのこだわりのLなのだ。某超高級日本食レストランで働く、ニューヨーク好きのリッチウーマン。…

Bond Street (2008年秋編)4

お湯は出ない、暖房はまともにきかない、仕事は休めない、部屋はリラックスできないという状況では治るものも治らないだろう。体調を崩して2週間経ち、ようやく風邪が治まろうとしていた。 S君の他にもう一人心の支えになってくれる人がいた。Oさんという年…

Bond Street (2008年秋編)3

部屋と会社から逃げ出す気だったのだ。だが行く当てはない。これは住む所と仕事がないことを意味する。しかしそれより前に体調不良がピークに達していた。9月14日日曜日、近くのB&Bに行き料金を聞いてみるが、フラットと比べると3倍の費用がかかることがわか…

Bond Street (2008年秋編)2

ロンドンに戻って最初の1週間は元気に過ごした私だが、いろいろな悪条件が重なり次の週体調を崩してしまった。短期滞在のフラットのお湯が出ずあったかいシャワーが浴びられなくなった。おそらくそれが最大の要因、決定的な要因となってふだん滅多に引かない…

Bond Street (2008年秋編)1

ロンドンに戻ってきた。8月31日夜ヒースローへ着き、9月1日朝から出勤した。出発の前日寝ずに飛行機の中でずっと寝るという作戦が当たったのか、ほとんど時差ぼけがなく最初の1週間を過ごした。 9月7日最初の日曜日、Kilburnのパブで初めてGIGというのを楽し…

『日常生活を経済学する』紹介その3

第18章「市場の失敗」は「公共財」を扱った最も重要な章である。 全体はtypeAさんが要約している。 http://d.hatena.ne.jp/typeA/20080116 下記ページには元テキストからの引用がある。 http://anacap.fc2web.com/PublicGoodsFallacy.html 元テキストのPriva…

『日常生活を経済学する』紹介その2

というわけで、内容を一部紹介していくことにする。特にお気に入りの箇所だけ。ところどころ訳を修正してある。 窃盗は他の形でのレントシーキングと同じ理由で非効率的である。(anacap:レントシーキングとは簡単に言えば交換や生産によらず利益を得ようと…

『日常生活を経済学する』紹介その1

デイビッド・フリードマン『日常生活を経済学する』はタイトルからはとっつきやすそうだが、実際は精密な議論の積み重ねで、読むのには相当骨が折れる。この本はWeb化もされているPrice Theory : An Intermediate Text というテキストのエッセンスを凝縮して…

『無政府国家への道』紹介その13

第七章 無政府資本主義 より ・「もしある人が『保護』を望むならば、かれは市場でそれを手に入れるよう自身で手はずを整えることができる。誰であろうと、かれを『保護する』ために、かれの意に反して、かれに不当な支払いをさせる正当な理由はない。」(ラ…

『無政府国家への道』紹介その12

第六章 国家の非効率性 より ・国家を合理的な行為者と考えること、すなわち北京、モスクワ、あるいはワシントンを一定の目標に従って行動する行為者として語ること、は人を欺くものである。国際関係の領域では、こうした巨大な国家機構は政治的ゲームや官僚…

『無政府国家への道』紹介その11

第五章 人間の権利の再発見 より ・もし現代の民主主義国家が大憲章あるいは権利章典の全文を採用するならば、現行法の大多数は人間の権利を侵害するものとして告発されるであろう。 ・社会的正義はその追求が専横につながる幻想である。 ・出発点での運の平…

『無政府国家への道』紹介その10

第四章 自由放任主義 より ・国家は物を統制すれば、それだけ人をも統制する。なぜなら、人は生きるために物を必要とするからである。 ・19世紀の自由放任主義経済学者であるギュスタブ・ド・モリナリは、郵便・輸送・通信・文化・慈善・道路・教育および貨…

『無政府国家への道』紹介その9

第三章 自由は秩序を生み出す(自由と権威) より ・社会主義者は自由と秩序、個人と社会を融和させることができない。かれらにとって、秩序、すなわち国家の目標は常に自由よりも優先するだろう。つまり、社会は常に個人よりも上位にあるだろう。 ・国家に…

『無政府国家への道』紹介その8

第三章 自由は秩序を生み出す(伝統と進歩) より ・国家の大望は人々の生活に絶えず大混乱を引き起こす。 ・収容、それは強制された進歩である。(空港や高速道路) ・所有権と結びついて、無政府状態は伝統と進歩を融和させる。 (第三章つづく)