アナルコ・キャピタリズム研究(仮)

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Bond Street (2008年秋編)2

ロンドンに戻って最初の1週間は元気に過ごした私だが、いろいろな悪条件が重なり次の週体調を崩してしまった。短期滞在のフラットのお湯が出ずあったかいシャワーが浴びられなくなった。おそらくそれが最大の要因、決定的な要因となってふだん滅多に引かない風邪を引いてしまった。(他の要因は8月の始めから続く物理的環境と精神的状況の激しい変化、その中でずっと体を休ませていなかったこと、こちらに来てから緑茶を十分に飲んでいなかったこと。)

風邪を引くことに慣れていないため、私は普通の人以上に動けなくなる。肉体的に悪くても精神的に良ければ動けるが、今の私は精神的にもろくなっておりろくに仕事ができなくなった。一方で最近の肉体的、物理的な余裕のなさが別の精神の余裕のなさを生んでいた。仕事が遅いのを上司にやる気がないのかと言われ、そうなら(まだこちらに来て間もないのに)やめろと言われた。

お湯が出ない上、ネズミとゴキブリが出るフラット。理不尽な要求ばかりしてくる上司。病気になっても身寄りのない外国で無茶な労働を強いる会社。ロンドンで出会い、自分の甲斐性なしから別れ、不幸にしてしまった今は日本にいるあの人。置かれた状況で精神は肉体を助けることができなくなった。将来のよい予想がまったく見えなくなった。

9月13日の土曜の夜、私は荷造りをしていた。

(続く)