アナルコ・キャピタリズム研究(仮)

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Bond Street (2008年秋編)4

お湯は出ない、暖房はまともにきかない、仕事は休めない、部屋はリラックスできないという状況では治るものも治らないだろう。体調を崩して2週間経ち、ようやく風邪が治まろうとしていた。

S君の他にもう一人心の支えになってくれる人がいた。Oさんという年上だがかわいらしい女性。別の部署で働く、私がロンドンで初めてときめいた人だ。9月21日の日曜日彼女と会い、Sohoのパブで1時間ほど話した。彼女とは以前何回か食事の約束をしていたのだが、結局一度も実現することなく終わっていた。Oさんはきれいで性格がよいと誰でも思うような女性。こちらに来て彼女が既婚だと知ったときすごくがっかりした。

その日、私と友達になりたいからと言って彼女は自分がある病気であることを教えてくれた。甲状腺の病気で朝起きられなかったり急に体調が悪くなったりするという。実際以前に私との約束が何回か直前でキャンセルになったり、会社の集まりに体調が悪くて来られなかったりということがあったのだが初めて理由がわかった。

さらに、私があの人と幸せだったころ、Oさんは離婚していた。噂には聞いていたのだが、そのことも話してくれた。8年間いっしょにいた相手だという。ロンドンが耐えられなくなりOさんを一人残して日本に帰った。彼女はこちらに来て3年半だが、その間7回引っ越したという。自分はロンドンで呪われていると思ったそうだ。

彼女の話を聞くと、自分が置かれている悲惨な状況がまったくたいしたことないと思うぐらいだった。フラットのお湯が出ないことなどイギリスではざらだし、日本からこちらに来て最初の一ヶ月が大変なのも当たり前だった。あの人と別れ精神的に参っているというのを合わせ考えても、彼女の辛い経験の前には何でもないと思えた。

(続く)