アナルコ・キャピタリズム研究(仮)

★無政府資本主義の理論(経済学)◆リバタリアニズム▽海外リバタリアンの文献翻訳■時事問題・日常生活▼ロンドン暮らし

ピーター・フランクルは正しかったか?

ちょうど3年前のことだ。繁華街でピーター・フランクル氏が大道芸をやっているのを見かけた。買ったばかりのiPhone3GSで数分ほど動画の撮影をしていたところ、本人より「撮るのやめてもらえますか」と流暢な日本語で注意された。撮影禁止の注意書きがあるの…

知的所有権の労働価値説

知的所有権の擁護者は財産権の基準として希少資源の先占ということよりも創造と労働のほうに焦点を置く。そのため創作者の労働に「報いる」ことの重要性を過度に強調してしまう。それはアダム・スミスの間違った労働価値説が、マルクスのより深く誤った共産…

知的所有権は研究開発投資を減らすと同時にイノベーションのインセンティブを小さくしている

功利主義は倫理的に問題があるだけでなく、首尾一貫していない。彼らは知的所有権法を取り上げ、その法がプラスの純便益をもつかどうか判断するために、「便益」から「コスト」を引いたりするが、その時は個人間の効用比較といった非論理的なことをせねばな…

知的所有権を擁護する功利主義の誤り

知的所有権を擁護する人は功利主義的論拠に立ってそれを説明することが多い。彼の主張はこうである。すなわち、さらなるイノベーションと創造を促すという「目的」は、いっけん不道徳的な「手段」―自分の物理的な財産を思い通りに使うという個人の自由を制限…

希少性という問題がない世界では財産に関するルールは不要である

だがしかし、次のことは明らかであろう。つまり、財産権の由来、理由、機能を所与とすれば、それは希少な資源についてのみ当てはまる。もし我々がエデンの園(地上の楽園)にいて、土地も他のものも無尽蔵に持つとすれば、希少性という問題は存在しないし、…

良い塀は良い隣人を作る

そこで自然界というのは経済的に希少なものを含んでいるわけである。私が何かを使うことは、あなたがそれを使うことと衝突する(あなたの使用を排除する)。逆もまた同じである。財産権の機能は、特定の個人(所有者)に排他的な所有権を割り当てることによ…

大衆マルクス経済学の間違い

私は超常現象の類は信じませんが、確かにマルクスの亡霊が有名経済学者を乗っ取っています。 by Rick Olson 21世紀のAIロボットが蒸し返す、19世紀のマルクス理論 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34312 <現在の米国では、企業の利益が過去最高を記録…

ネットとケータイ―私たちを国家から解放してくれた自由のための技術

民間セクターが音声コミュニケーションを完全に私有化できる能力を得たのは少なくとも1947年以降であるが、政府があまりにも電波を独り占めしてしまったために実際にそうすることはできなかった。1994年になって初めて、コミュニケーション分野で革命を起こ…

電子媒体―出版における革命

最近の子どもは親に対して「ママたちはインターネットの前に生まれたの?」などと聞く。子どもたちはネット以前に生活があったということを薄々知ってはいるが、それをまるで自動車や水道以前の生活と同じものかのように考えている。これはすごいことである…

無限に複製可能なものに所有権はない

しかし知的所有権の保護は普通財産の保護となんら変わるところはないと反論する人もいよう。それは違う。真の財産は不足している。知的所有権の対象になるものは不足していない。ステファン・キンセラはそう説明する。画像、アイデア、音、ページ上の文字の…

良い経済学と悪い経済学の違い

新たな経済学的誤謬が日々生み出される主な要因として、キリのない私益の弁護という一つ目の理由に加えて、二つ目の理由がある。すなわち、実施される政策の短期的な効果だけ、また特定のグループへの効果だけを見てしまうという人間の執着的な傾向であり、…

インド首相マンモハン・シンの改革

マクドナルドは官僚制?!で紹介されていた中野剛志『官僚の反逆』をさっそく読んでみました。主流派経済学は科学でないというくだりはなかなか的を得ていると思いましたが、アメリカの経済学Ph.D.はマクドナルドだという一節にはさすがに笑いました。庶民に…

市場における民主主義とは

何百万人もの人々がピンカピンカを飲むことを好む。世界を股にかけるピンカピンカ・カンパニーの飲料だ。何百万人もの人々が、物語や神秘的な絵、タブロイド紙、闘牛、ボクシング、ウイスキー、タバコ、チューインガムを好む。何百万人もの人々が、武装し戦…

消費者が君主になる資本主義社会

資本主義と敵対する保守主義者と「進歩」主義者は、古い基準に関して意見の一致を見ない一方で、資本主義社会の基準をダメだと決めつけるということで完全に一致している。保守主義者と進歩主義者は、彼らの仲間から高い評価を受けている人ではなく、つまら…

民主主義―現代の世俗的な宗教

およそすべての民主主義社会が官僚制と規制熱の過剰に苦しんでいる。国家の触手は全市民の生活に入り込んでくる。ありとあらゆるものにルールと規制がある。そしてすべての問題が、真の解決案でなくさらなる規制とルールによって対処されるのだ。 民主主義が…

行列―タイムリッチだけが優遇される悪い市場

割当制度は必要である。なぜなら資源と、それゆえ人々が作れる生産物は、需要に対して不足しているからである。さらに、皆が自分の好むように資源を使いたいと思うなら、その管理権を得るために競争しなければならない。 割当メカニズムが競争の次元を決める…

政治に参加することの不毛さ

あなたに政府についての知識が欠けていても何の不思議もない。実際、完全に合理的である。というのは、政府のパフォーマンスを効果的に評価しようとして情報を入手するインセンティブは、市民にとってほとんどないからである。たとえ民主主義であったとして…

限界労働者を島流しにするということ

いったい何を間違ったのか。世の中に仕事がないというわけではない。ある価格では必ず仕事は豊富にあるし、少しでもお金を稼ぐことはゼロよりいいことである。少なくとも面接の機会はどこかにあるはずだ。求職者の就業の障壁をリストにすれば長いものになる…

政府はいつも支出を最大化し生産を最小化する

政府の原理―司法の独占と課税権力―を所与とすれば、国家権力を制限することや個人の生活と財産を安全に守るということはいずれも幻想なのだ。独占的庇護は、公正と保護の両方の価格を上げ、品質を下げる。そもそも税金を元にした保護機関というのが語義矛盾…

社会主義経済はカオスである

これとははっきり対照的に、社会主義に経済と呼べるものは何もないし、経済効率も何もない。その理由は金銭による計算と費用計算が定義により不可能なことにある。生産要素に対して私有財産権がなければ、どんな生産要素にも価格がつくことはない。それゆえ…

政府ほど我々にとって危険な存在はない

このように経験的な証拠ははっきりしている。国家の保護を信じるのは明らかに間違っている。国民を保護するというアメリカの国家主義は完全な失敗といえる。合衆国政府は私たちを守りはしない。それどころかアメリカ政府ほど我々の生活・財産・繁栄にとって…

国防問題における外部性(フリーライダー)理論のおかしさ

「構成員がただ乗りするので防衛は私的には供給されえない」という経済学の標準的な理論は、個人メンバーだけでなく団体メンバーにも当てはまるはずだろう。つまりある都市や州、国家は、他の国にフリーライドすることができる。メキシコとアメリカ、カナダ…

政府が市民を暴力から守っているということの矛盾

第一に政府は無理やり市民を「防衛」活動の一員にしてしまう。第二に政府は自分たちが管轄する地理的な領域内で、別の第三者が顧客保護契約をするのを脅迫によって禁じて、自分たちとの保護契約を優先させる。もし本当の意味での暴力からの保護というのが、…

市場だけが銀行を規制すべきである

連邦準備制度の銀行独占は破壊されるべきである。そうして企業家が完全に私有化された銀行を設立し、市場のプロセス以外に規制されないようにする。連邦準備制度こそが政府が通貨を膨張させる仕組みなのだ。また特権法によって銀行が要求払い預金に対してほ…

徴兵制の経済分析

徴兵制について滅多に指摘されることがないのは、それが独占的特権を付与し、また制限的な賃金を押しつけるための効果的方法であるという点だ。 徴兵制は、児童労働法と同じように、労働市場から労働力の一部分を奪う。この場合、つまり健康的な大人である。…

「自然」独占の神話

経済学基礎の授業をとる学生なら誰でも教えられることがある。いわゆる公益事業(電気・水道・ガスなど)というのは政府が20世紀初めからずっと規制している独占であり、そうすることによって国民を自由市場あるいは「自然」独占の悪魔から守っているのだ。…

この世に安定した国家というものはない

ソビエト崩壊の教訓は社会主義が機能しないということだけではない。それは全体包括的な国家主義は長続きしないということであり、このことは一党独裁の下であろうと民主主義という幻想の下であろうと変わらない。我々はソ連の20年前の経験を謙虚に受け止め…

模倣のダイナミズムとイノベーション

18世紀と19世紀のドイツ語文化圏における芸術を見てみよう。作曲家による模倣は最大の賛辞であると考えられた。バッハがブクステフーデのエラボレーションを書いたとき、それは故人の遺産と記憶への素晴らしい贈り物だと見なされた。マーラーがブラームスの…

知的財産権は時代に逆行している

知的財産の問題は今日の世界では非常に重要なトピックである。 我々が日常使う物やサービスの多くがどんどんデジタル化されている。何かをデジタル化するということは、それからある部分を取り出し、希少性の世界から無限に再生産可能な世界に移すということ…

希少な資源を政府を通じて割り当てるということ

政府は課税する権力をもち、その強制力を使って「サービス」を生産することができる。実際それがコストに見合っているかどうか関係なくである。民主主義の建前では、納税者は欲しくないものを強制的に買わされたり、あるいは支払い意思額以上の金額を強制さ…