市場における民主主義とは
何百万人もの人々がピンカピンカを飲むことを好む。世界を股にかけるピンカピンカ・カンパニーの飲料だ。何百万人もの人々が、物語や神秘的な絵、タブロイド紙、闘牛、ボクシング、ウイスキー、タバコ、チューインガムを好む。何百万人もの人々が、武装し戦争することを切望して政府に投票する。そうして、これらの需要を満たすのに必要な、ありとあらゆるものを最善・最安の方法で提供する企業家が裕福になることに成功する。市場経済という枠組みの中では、重要なのは学術的な価値判断でなく、買うか買わないかということによって人々が実際に顕示する評価である。
市場システムの不公平さに愚痴を言う人に対しては、ただ一つのアドバイスが可能である。もしあなたが富を得たいなら、安い何か、あるいは人々がより好む何かを提供して大衆を満足させよ。別の飲料をミックスしてピンカピンカに取って代わるよう試みよ。法の下の平等は、百万長者全員に挑戦する権利をあなたに与えてくれる。もし政府による制限に邪魔されない市場において、あなたがチョコレート王や映画スター、ボクシングチャンピオンを負かせないなら、それはあなたの責任なのだ。
しかし、もしあなたが、衣料品屋かプロボクサーになることで得られるかもしれない富よりも、詩や哲学を書くことで引き出せるかもしれない満足の方を好むならば、あなたは自由にそうすることができる。ただ当然であるが、そうすればあなたは大多数に奉仕する職業の人ほどにはお金を稼げないだろう。というのも、そのようなことが市場における経済的民主主義のルールだからだ。少数の需要しか満たせない者は、より多数の需要を満たす者よりも、少ない票つまりお金しか集めることができない。お金を稼ぐということでは、映画スターは哲学者をはるかに凌ぎ、ピンカピンカの製造者は交響曲の作曲家に勝るのだ。
Ludwig von Mises
THE ANTI-CAPITALISTIC MENTALITY
Status Society and Capitalism
より