模倣のダイナミズムとイノベーション
18世紀と19世紀のドイツ語文化圏における芸術を見てみよう。作曲家による模倣は最大の賛辞であると考えられた。バッハがブクステフーデのエラボレーションを書いたとき、それは故人の遺産と記憶への素晴らしい贈り物だと見なされた。マーラーがブラームスのフレーズを使ったり、ベートーベンの交響曲を再編曲したりしたことは、巨匠から巨匠へのトリビュートであるとされた。そういうのは文学でも経済学でもある。
経済における模倣は発展のために絶対不可欠なことである。どんな新製品も完璧でないし、また社会は常に変化しているからだ。テクノロジーが変化する市場についていくためには模倣のダイナミズムが必要である。そしてこれこそがクリエイターへの報酬という名のもと知的財産権によってつぶされていることなのだ。
流れの速い模倣の世界でクリエイターがどう稼ぐか?いつもと同じである。つまり最高の製品を適正な価格で最初にマーケットに持っていくこと。誰かが真似すれば、また張り切ってさらなるイノベーションを起こす。社会と経済はそうして成長する。
Jeffrey A. Tucker
It's a Jetsons World: Private Miracles and Public Crimes
40. Ideas, Free and Unfree
より