アナルコ・キャピタリズム研究(仮)

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バターミルクって何?

去年から一日一食や糖質制限など、いろんな食事法を試しています。そして最近出会ったのがインドの伝統医学「アーユルヴェーダ」というもの。内容を見るとなんともオカルトな雰囲気なのですが、それ自体「生命科学」という意味の、自称科学なのです。 アーユルヴェーダでは牛乳が良い食品とされるのですが、「バターミルク」もいいと書いてありました。聞いたことがないですが、もしかして(日本人の7~8割を占める)乳糖不耐症でも飲めるのだろうかと調べていたところ、驚きの事実がわかりました。

 

バターミルク - バター製造時に出来る液体のことである。欧米ではスーパーマーケットで買えるほどメジャーな飲料であるが、日本では省令上乳製品にならないため主にバターミルクパウダーに加工される。> 乳製品 - Wikipedia 省令上乳製品にならない? 乳及び乳製品の成分規格等に関する省令 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S26/S26F03601000052.html なるほどこの省令のなかには「バターミルクパウダー」はありますが「バターミルク」はありません。たしかにバターミルクは法律上、乳製品にならないと言えるでしょう。 しかし別表に一箇所だけバターミルクの記述があります。 <(五) 乳等の成分又は製造若しくは保存の方法に関するその他の規格又は基準  (2) 加工乳以外の乳、クリーム、濃縮乳及び脱脂濃縮乳にあつては他物(牛乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、クリーム、濃縮乳又は脱脂濃縮乳を超高温直接加熱殺菌する場合において直接殺菌に使用される水蒸気を除く。)を混入し、加工乳にあつては水、生乳、牛乳、特別牛乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、クリーム並びに添加物を使用していないバター、バターオイル、バターミルク及びバターミルクパウダー以外のものを使用しないこと。> この記述では、バターミルクは加工乳に使用してよいと読めます。つまりバターミルクを含む加工乳(とうぜん乳製品)というのは論理的に可能であり、よって100%バターミルクからなる乳製品も可能ということです。 もしかすると、バターミルクをそのまま売ることは法律的には問題ないのかもしれません。じっさいにスーパーの店頭に並ばないのは別の理由があるからではないでしょうか。 調べると下記のような補助金制度があることがわかりました。 加工原料乳生産者補給金等暫定措置法 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S40/S40HO112.html 加工原料乳生産者補給金制度の交付要綱等|農畜産業振興機構 http://www.alic.go.jp/r-keiei/raku03_000002.html <酪農経営の安定と牛乳・乳製品の安定供給を図るため、飲用向けに比べて価格が安いバターや脱脂粉乳などの乳製品の原料となる生乳(加工原料乳)を販売した生産者に加工原料乳生産者補給交付金を指定生乳生産者団体を通じて交付しています。ここに当制度の交付要綱等を掲載いたします。> <(参考)生産者補給金の対象となる加工原料乳の用途 バター、脱脂粉乳、全脂加糖れん乳、脱脂加糖れん乳、全粉乳、全脂無糖れん乳、加糖粉乳、脱脂乳(子牛ほ育用)> 要綱を見ると、補助金は一定量の乳と特定の用途についてのみ与えられるということ。しかしその特定用途にはバターミルクは入っておらず、別の用途に使うインセンティブがあるということのようです。 つまりバターミルクが製品として加工されないのは、この補助金制度のためだと考えられます。おそらく省令ではありません。 <バターミルクは、バター製造のために脂肪分が既に取り除かれていることにより、通常の牛乳と比べて脂肪やカロリーが低い。カリウムビタミンB12、カルシウムが豊富である。バターミルクは、牛乳よりも消化がよく、スキムミルクよりも多くの乳酸を含んでいる。消化がよいため、たんぱく質やカルシウムが体内に吸収されやすい。牛乳1杯あたり、157kcal、脂肪分8.9gであるのに対して、バターミルクは1杯あたり、99kcalで、脂肪分2.2gである。ただし、スキムミルク低脂肪乳から作っているものもあるため、脂肪の量はブランドによって異なる。> バターミルク - Wikipedia 日本人はもともと牛乳を飲みません(昔の時の権力者が仏教に影響されたため)。またじっさい多くの人は下痢になるので飲んできませんでした(乳糖を消化する酵素を作る遺伝子をもたないため)。以上のことから日本では牛乳毒説を支持する人も多いです。しかし2~3割の人は牛乳あるいはバターミルクを飲めるのであり、このように優れた効能をもつ食品なら、自由市場では十分な可能性で出現するはずなのです。 省令であろうと補助金制度であろうと、いずれにせよ政府のせいでバターミルクのような健康食品が失われるのならば、それは本当に「もったいない」ことです。