自由主義経済学者は長生き?
公共選択論のとして有名な経済学者ジェームズ・ブキャナンが亡くなった。93歳。シカゴ学派の一人であり、1986年にノーベル経済学賞を受賞した。
先月、オーストリア経済学の研究者である越後和典先生宅におじゃました時、先生の年齢(85歳)のことが話題になり、「自由主義経済学者は長寿の傾向があるのではないでしょうか?」と言ってみたことを思い出した。ロナルド・コース(102歳、現役)、ミルトン・フリードマン(享年94歳)、ミーゼス(享年92歳)、ハイエク(享年92歳)などなど。しかしそこでの私の発言はあまり同意を得られなかった。
帰り、京都から大阪へ向かう新快速電車の中で考えた。仮に自由主義経済学者の長寿が統計的事実だとして、その理由はどう説明できるだろうか。次のような仮説を思いついた。すなわち、レッセフェールの経済学者は自分に対しても正しい費用便益分析ができるから、最大限寿命を延ばせるのかもしれない。食事や睡眠、運動など健康に気づかい、それらの行動の費用と効果を的確に分析できる。さらに性格的に近視眼的でない、将来のことを考えその場だけの快楽を我慢できる、経済学の言葉でいえば時間割引をしないタイプならば、自分の健康について優れた費用便益分析を行なうことで、長生きが可能になるのだと。
私の主張は「経済学者は長生きである」というより、むしろ特に「自由主義経済学者は長生きである」ということである。正しい費用便益分析はレッセフェールの方向に行くと言いたいのだ。
20世紀の代表的な経済学者30人の享年を調べてみた。太字が自由主義経済学者。もともと学者の平均寿命は一般よりかなり高いと思われる。その中で経済学者は高く、特に自由主義経済学者は高いという私の説は、このデータで支持されるように思う。
ヘンリー・ハズリット 98歳
ジョン・ケネス・ガルブレイス 97歳
ポール・サミュエルソン 94歳
ミルトン・フリードマン 94歳
ジェームズ・ブキャナン 93歳
ワシリー・レオンチェフ 93歳
ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス 92歳
フリードリヒ・ハイエク 92歳
レオニード・ハーヴィッツ 90歳
ケネス・アロー 91歳
ジョン・ヒックス 85歳
フランコ・モディリアーニ 85歳
サイモン・クズネッツ 84歳
ハーバート・サイモン 84歳
ジェームズ・トービン 84歳
ジェラール・ドブルー 83歳
ウィリアム・ヴィックリー 82歳
アルフレッド・マーシャル 81歳
ベルティル・オリーン 80歳
ジョージ・スティグラー 80歳
ジョン・ハーサニ 80歳
アーヴィング・フィッシャー 80歳
エリノア・オストロム 78歳
ヴィルフレド・パレート 75歳
レオン・ワルラス 75歳
マレー・ロスバード 69歳
ヨーゼフ・シュンペーター 66歳
カール・マルクス 64歳
ジョン・メイナード・ケインズ 62歳
ウィリアム・フィリップス 60歳