アナルコ・キャピタリズム研究(仮)

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イギリスを救ったサッチャーの名演説

映画『マーガレット・サッチャー』が金曜日から公開されていますね。まだ見に行けてないんですけど、この作品でアカデミー主演女優賞をとったメリル・ストリープの見事な演技は予告編から伝わってきます。メイクや衣装、いや、似すぎです。

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http://www.youtube.com/watch?v=djUTosfnxT4

■「人間はみな同じでないが、同じように尊重されるべきなのだ。」

1975年、サッチャーが保守党党首になって初めてのスピーチが素晴らしいのでご紹介します。動画のこの部分は最もよく引用されるサッチャーの名文句です。英語の学習をする高校生の皆さん、オバマの演説なんか暗記しないでこれを真似して覚えましょう。全文はこちらで読めます。

http://www.britishpoliticalspeech.org/speech-archive.htm?speech=121

Margaret Thatcher: Free Society Speech (1975)

http://www.youtube.com/watch?v=oK3eP9rh4So

国民は政府のコンピューターの中の数字にすぎない、と信じている社会主義者がいる。われわれは数字でなく一人の人間のはずである。

われわれはみな誰一人として同じではない。神様のおかげで、皆がみな異なる人間なのだ。社会主義者はそうでないと偽善的に言う。だがわれわれは他人と同じでなくていい権利をもつはずである。人間はみな同じでないが、同じように尊重されるべきなのだ。

人は皆、自分が望むように働き、自分で所得したものを消費し、自分の財産を所有し、政府を主人でなく召し使いとする権利をもつ。それが自由経済のエッセンスであり、その自由の上にわれわれの他の自由もあるのだ。

 

■「イギリスの闘う女」

下は1979年、タイムの表紙になったときのものです。

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http://www.time.com/time/covers/0,16641,19790514,00.html

大学時代はハイエクに傾倒。市場原理と起業家精神の重視を主張しイギリスで初めての女性首相となりました。これは政治的に奇跡としか言いようがないですね。もっとも現代ではロン・ポールさんに期待していますが。

■「社会というものはありません。あるのは個人と家庭だけです。」

サッチャーのクオートとしては下のものも有名です。

Prime minister Margaret Thatcher, talking to Women's Own magazine, October 31 1987 http://briandeer.com/social/thatcher-society.htm

80年代の墓碑文?「この世に社会というものはない」

あまりにも多くの人たちが「もし問題があるなら、それを片付けるのが政府の仕事だ」という理解をしてきたというのが今のこの時代だと思います。「俺には問題がある。だから給付金をもらう。」「俺はホームレスだ。だから政府に家をもらう。」皆が自分の問題を社会に投げつけるのです。しかし社会というものはありません。個人だけが、男と女だけが、家族だけが存在するのです。政府といってもそれは人々を通してしか何かをできないのであり、その人々はまずは自分を頼りにするのが先決なのです。自分自身の面倒、そして隣人の面倒を見ることが義務なのです。人々は責任を無視して権利ばかりたくさん主張します。ですが最初に義務を果たさなければ権利などというものはないのです。

 

■「サッチャーを殺したいと思っているイギリス人はたくさんいるよ。」

サッチャー以前のイギリスは働かなくても食えて遊べるいい社会だったそうです。

<国からお金をもらって大学に行き、その後も働かず、読書にふけり、夜はクラブで音楽を楽しみ、その後朝まで友人と討論を繰り広げ、昼間はひたすら寝る。・・・たまに海外旅行にいって、飽きたらまたイギリスに戻ってくる。> <70年から80年代のイギリスの若者はみんなそうやって、くらしていたのだというのです。> <その当時、彼が国からもらっていたお金は、週に30ポンド。30ペンスでパブで一杯のビールが飲めた時代にです。なので、本当に充分に暮らせたわけです。> <なので、「だったら、働かなくていいや!」という考えになっていったようです。>

藤城真木子コラム 83 パーセント!!』より http://www.macky-web.com/previous/column_art.php?id=302

 

今パブでビールを飲むとだいたい3ポンドですから、週に300ポンドもらう感覚です。ロンドンで部屋を借りても余裕で生活できる額。日本だったら週45,000円ぐらい。最高税率80%で「システマティックな再分配」を行えばこんなもんなんでしょう。上のほうの人たちにとってはとんでもなくひどい社会です。でも誰にとっても働くのが馬鹿馬鹿しい社会というのは原資がなくなるので維持できません。

本気でイギリスの共産主義を滅ぼそうとしたサッチャーは急激な政策転換で、2000年代日本の小泉・竹中の比でない恨みを買ったようです。

■ユーモアの人

映画でも描かれているのでしょうが、サッチャーはとてもユーモアにあふれた女性だったようです。鉄の女のイメージとは逆ですね。

以下は1990年に行われたサッチャーの党首・首相としての最後のスピーチです。

イーストボーンの補欠選挙自由民主党議席を奪われたのを受けて)

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そこで自由党の話になります。ここ何日か、彼らの新しいシンボルマークについて、意地の悪い冗談が言われているみたいです。自由民主党ブラックプールの大会で採用した、何かの鳥のマークですね。政治は真剣なビジネスです。あまり小さい声で話すべきではありませんね。なのでこのシンボルとその政党についてだけ話をします。

これは「元」オウムです。単に気絶しているということではありません。生きるのをやめたのです。息絶え、神のもとに帰ったのです。それはもはやオウムではありません。人生に幕を下ろし、天国の聖歌隊に入ったのです。これは「故」オウムです。それではお話変わって・・・

Margaret Thatcher does the Dead Parrot Sketch http://www.youtube.com/watch?v=DQ6TgaPJcR0

 

自由党社会民主党が合併してできた新しい左派政党を「死んだオウム」扱いでみんな大爆笑。20年の時を経て誰でも知っているものとして引用されるってどれだけインパクトのあるコントだったんでしょう。それにしても最後の演説がモンティパイソンへのオマージュだったとは!

■バロネス・サッチャー、今でも国民的な存在

2009年、サッチャーが自宅で転倒、骨折して入院した時のニュースです。

Ex-PM Thatcher kept in hospital http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/8100253.stm

かなりロイヤル級に近い扱いだと思います。歴史的な首相就任からちょうど30周年ということで当時よくメディアで取り上げられていました。ディメンシャ(認知症)と闘いながらも公の場に姿を現し、その前の週も1979年の勝利を記念する集まりに出席していました。

2007年にはブラウン首相がダウニングストリートに招待し、「信念の政治家」と称え、労働党議員のみならず国民を驚かせたこともありました。

Brown welcomes Thatcher to No 10 http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/6993269.stm

マーガレット・サッチャーリバタリアンの私が例外的に、そして最も好きな政治家です。