アナルコ・キャピタリズム研究(仮)

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自分の子供を日本で「誘拐」して逮捕・拘束中のアメリカ人、日本人であることが判明

これはいったい。 (昨日の記事はこちら:アメリカで親権をもつ父親、日本で子供を「誘拐」するも米国領事館の玄関前で逮捕) 昨日のCNNでは父親はお涙頂戴の、悲劇のヒーロー的扱いだったが、今日、以下の新情報が明らかになったようだ。 1:父親は九大医学部で博士号をとった(参考ページ) 2:父親は米ハイテク企業の最高経営責任者である(参考ページ) 3:父親は日本に帰化していた(つまり日本人である。日本においてはアメリカ国籍は認められない→多重国籍) 4:父親は日本で離婚届を出していない(アメリカで離婚・再婚している。なお新妻は3児連れ)
福岡で逮捕の米国人父、日本への帰化が判明 弁護士は外交問題と 東京(CNN) 離婚した元妻と一緒にいた子供2人を誘拐したとして福岡で逮捕された米国人の父親が、4年前に日本に帰化していたことが、警察の調べで30日、明らかになった。このため、国際的な誘拐問題ではなく、日本国内における犯罪と見て警察は捜査を進める模様。一方、逮捕された男性の弁護士はCNN番組で、「米国政府に訴えかけて子供を連れ戻す」と、外交問題として扱う構えを見せている。 事件は28日朝、福岡市内で発生した。逮捕されたクリストファー・サボア容疑者が、登校中だった子供2人と元妻に車で近づき、子供を無理やり車に乗せて逃走。福岡の米国領事館でパスポートを取得しようとしたが、元妻の通報を受けて駆け付けた警官に逮捕された。 サボア容疑者と元妻は米テネシー州フランクリンで暮らしていたが離婚。元妻はフランクリンで住むという合意があったが、夏休みの間に元妻が子供を連れて日本に帰国したため、同容疑者が追ってきたとされている。 米国の報道によれば、テネシー州の裁判所は子供が連れ去られたと認定してサボア容疑者の親権を認め、フランクリン警察は元妻の逮捕状を取って行方を追っていたという。このため、サボア容疑者の行動は米国において、子供を連れ戻す「英雄的な」ものと報道されている。 しかし、日本の警察の調べで、サボア容疑者が4年前に日本に帰化し、東京に本籍を置いていたことが分かった。また、2人の子供は日本のパスポートを所持。さらに、サボア容疑者と元妻は日本において離婚手続きをしていなかったという。このため、今回の事件は婚姻関係を継続している夫妻間で、夫が子供を連れ去った事件として扱われる可能性が高くなった。 同容疑者の弁護士ジェレミー・モーレー氏は29日夜、「子供を米国に連れ戻せる可能性はかなり低くなった」との見方を示す一方で、「この問題を国際刑事警察機構(ICPO)に持ち込むつもりだ。外向的な圧力をかけたい。米国政府には、強固な態度で対応してもらいたい」と、あくまで外交問題として争うと声高に述べた。 英語版: Father, kids in custody case Japanese citizens, officials say Story Highlights # Christopher Savoie became Japanese citizen four years ago, authorities say # Savoie's marriage to Noriko Savoie never annulled in Japan, officials say # Children in custody dispute hold Japanese passports # Christopher Savoie being held in Japanese jail
どうやら、この父親はかなりの無茶をやっていたようだ。(とはいえアメリカでは多重国籍が認められるわけだから、アメリカ的には日本でふつう考えられるほど無茶ではないのかもしれない。) 米国領事館が事実上、保護を拒否したというのも、父親が日本人であることから別に正当化されるわけである。また同時に、問題は日本人同士の間で起きたものであるとも言えそうだ。さらに日本で法的に結婚状態であったということは、重婚罪にあたるはずである。 いずれにせよ、日本国籍を持っているということは、この事件の大きな、そして特殊なポイントになるだろう。 あと父親は法律(ハーグ条約=下記参照)を知らなかったのかもと昨日書いたが、日本に来る前からアメリカ政府に救済を求めたいと話していたそうである。となると日本での「誘拐」行為は、かなりの冒険を自ら進んでやったか、正常でなかったということになる。 今後の流れとしては、日本の裁判所で親権を争い、母親に単独親権が行くと考えられる。父親は日本で誘拐罪および重婚罪で罰せられるだろう。 しかし一方で母親は、アメリカでは誘拐犯で国外逃亡犯なのであり(ただし父親がテネシーの裁判所で完全な親権を獲得したのは、母親が子供を連れて日本に行った後だという話である)、身柄引渡しに関する日米間の取り決めによって、米国に移送され収監され罰せられるべき、とも考えられるわけだ。 この場合、父親のアメリカ人は日本で刑罰を受け、母親の日本人はアメリカで刑罰を受けるということになる。ハーグ条約はこの2国間では存在しないわけだから、それが形式上妥当だと考えられるはずだが、どうなんだろうか。 これは実に興味深い事件である。
Wikipedia - 国際的な子の奪取の民事面に関する条約 国際結婚等で夫婦間が不和、あるいは離婚となった場合、一方の親が他方の親に無断で児童を故国などの国外に連れ去ることがあり、その場合連れ去りが児童の定住国で不法行為であっても、国内法・捜査権が国外に及ばないことから連れ去られた側が事実上泣き寝入りを強いられる場合がある。このような場合に、児童の定住国への帰還を義務づけることを目的として作られた条約である。 日本では、民法766条により離婚後は両親のいずれかの単独監護となるが、アメリカをはじめとする欧米国では共同親権・共同監護が原則となっている。