限界労働者を島流しにするということ
いったい何を間違ったのか。世の中に仕事がないというわけではない。ある価格では必ず仕事は豊富にあるし、少しでもお金を稼ぐことはゼロよりいいことである。少なくとも面接の機会はどこかにあるはずだ。求職者の就業の障壁をリストにすれば長いものになる。会社に余裕がなくても強制される福利厚生や、採用と解雇に関する規制、法的義務遂行への不安、公立教育と現実の職場の需要のミスマッチなどもそれには含まれる。
そう、最低賃金というアホな法律である。これは人間の権利を侵害するものである。それは労働者が雇用者と直接交渉し、双方が合意する雇用条件で契約することを禁じているのだ。
Jeffrey A. Tucker
A BEAUTIFUL ANARCHY: HOW TO CREATE YOUR OWN CIVILIZATION IN THE DIGITAL AGE
"The Banishment of the Marginal Worker"
より
政府はいつも支出を最大化し生産を最小化する
政府の原理―司法の独占と課税権力―を所与とすれば、国家権力を制限することや個人の生活と財産を安全に守るということはいずれも幻想なのだ。独占的庇護は、公正と保護の両方の価格を上げ、品質を下げる。そもそも税金を元にした保護機関というのが語義矛盾であり、それはさらなる増税と少ない保護につながる。
たとえ政府がその活動を前から存在する財産権の保護だけに絞ったとしても(国家による保護というのは本来そういうもののはずだが)、次に出てくる問題はどれくらいの量のセキュリティを提供すべきかということだ。私的な利益と労働の不効用に動機づけられて(これは皆同じであるが)、しかし課税権というユニークな権力を持つ政府の答えはいつも同じである。保護のための支出を最大化し―おそらく国中のほとんどすべての富を保護に費やすことができる―そして保護の生産を最小化する。
Hans-Hermann Hoppe
THE GREAT FICTION
The Private Production of Defense
より
国防問題における外部性(フリーライダー)理論のおかしさ
「構成員がただ乗りするので防衛は私的には供給されえない」という経済学の標準的な理論は、個人メンバーだけでなく団体メンバーにも当てはまるはずだろう。つまりある都市や州、国家は、他の国にフリーライドすることができる。メキシコとアメリカ、カナダについて考えてみるとよい。仮に冷戦時代にアメリカがソ連から国を守るとすると、この理論によれば、その利益は必ず北と南の隣国であるカナダとメキシコに波及(スピルオーバー)する。それゆえ、アメリカは国防に投資しないだろう。カナダ・メキシコについても同様のことが言える。ソ連も似たようなジレンマに直面する。(中略)だが事実はどうか。アメリカもソ連も巨大な軍備を整えた。
Walter Block
NATIONAL DEFENSE AND THE THEORY OF EXTERNALITIES, PUBLIC GOODS, AND CLUBS
より
政府が市民を暴力から守っているということの矛盾
第一に政府は無理やり市民を「防衛」活動の一員にしてしまう。第二に政府は自分たちが管轄する地理的な領域内で、別の第三者が顧客保護契約をするのを脅迫によって禁じて、自分たちとの保護契約を優先させる。もし本当の意味での暴力からの保護というのが、政府自体からの暴力の保護という意味を含むならば(そういう意味を含むべきではないという理由がないならば)、一番の権利侵害者は正にその政府であると言える。言ってみれば国家というのは、マフィアのボスがその犠牲者に対して彼自身から守ってやろうとむちゃくちゃを言っているのと変わらないのだ。
Walter Block
NATIONAL DEFENSE AND THE THEORY OF EXTERNALITIES, PUBLIC GOODS, AND CLUBS
より